凄い人には魅力がいっぱい!知れば知るほど好きになる!本質を見抜く瞳を持つ   奈良橋陽子さんインタビュー 2016.05.17

                     (以下、奈良橋さん以外は敬称略)

・伝説のロックバンド「ゴダイゴ」の「ビューティフル・ネーム」「銀河鉄道999」「Monkey Magic」など数々の大ビット曲の作詞を手がける。

・映画・舞台などの演出家として活躍するー方、俳優育成・プロデューサーとしても、別所哲也、藤田朋子、今井雅之、川平慈英、オダギリ・ジョーらを演劇界、テレビ業界へと輩出。

・NHK連続テレビ小説『マッサン』のヒロインとして一躍脚光を浴びたシャーロット・ケイト・フォックスを発掘。

・ハリウッド映画進出を果たし世界に飛躍した渡辺謙や菊地凛子、桃井かおりを抜擢。

これらの偉業を成し遂げている方をご存じでしょうか?

5月28日から公開の映画「手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~」の映画監督でもある

 奈良橋陽子さん

なのです。

今回、奈良橋陽子さんが運営する俳優養成所「アップスアカデミー」にてその制作秘話をインタビューさせていただいているうちに、前述の偉業を成し遂げているその魅力が伝わってきました。


出典 http://www.doclasse.com

写真提供: ドゥクラッセ 


◆奈良橋さんの不思議な魅力

まるで少女のような笑顔を見せる奈良橋さん。

瞳がきれいで、初めてお会いした瞬間に誰もがファンになってしまう……不思議とそんな雰囲気を持ち合わせている方です。

日本と海外を行き来している奈良橋さんの時折混じる英語も、不自然さはなく、言葉の違いが何の壁も持たないことを感じさせてくれます。たとえその言葉の意味がわからなくても、すんなり心に溶け込んでいきます。楽しい言葉であれば楽しく、悲しい言葉であれば悲しく、素直な感情をそのまま表現している言葉に日本語も英語も関係ないと思わせてくれるのです。

また、奈良橋さんの特徴的な髪の色、大きな瞳も不思議とさまざまな色と輝きを持ち合わせ、人類みな同じ仲間であるということをその存在だけで伝えてくれているようです。


◆壁のない世界を創る

まずは、この世界に入りたいと思ったきっかけを伺ってみました。

すると奈良橋さんは、懐かしそうに目を細めてお話しをしてくれました。

「そのときはそう思ってはいませんでしたが、今思えば5歳くらいのときに見た映画『風と共に去りぬ』がきっかけになったのかもしれないですね」

当時『風と共に去りぬ』を見て感動した方はたくさんいらっしゃると思います。そのうちの一人だった奈良橋さんでしたが、この小さいときの感動がずっと生き続け、自分自身が『風と共に去りぬ』のような世界観を創りたいという思いにまで至ったのです。

最初は、自分自身を使って表現を行う役者に挑戦したそうです。日本のいろんな劇団をあちこち探したそうですが、なんとなく馴染めずにニューヨークへ行って勉強を始めたのです。そこまでしてやりたかった理由は理屈ではなく、ただ純粋に小さい頃に見たあの世界を創りたかったという思い一つでした。


出典 https://upload.wikimedia.org

ウィキペディア「風と共に去りぬ(映画)」より


◆役者よりも演出

ところがニューヨークで役者の勉強を始めてしばらくすると、様々な理由で壁にぶつかることになったのだそうです。

25歳のときに日本へ戻ってきて、たまたま大学生の芝居の演出をする機会があったのが転機。そのとき奈良橋さんの心には輝きが満ちたのです。

これだ!私のやりたかったことはこれだったんだ!」と。

それからは役者ではなく演出家として活動をすることになりました。


◆創りだす世界に欠かせない音楽

奈良橋さんにとって、一つの世界を創るには映像だけではなく、音楽も必要でした。お芝居をミュージカル風に演出するときもあり、お芝居に音による彩りも添えました。

もともと音楽が好きだったという奈良橋さんは、ロックバンド「ゴダイゴ」の作詞も手掛け、耳からも心に響く世界を生み出してきました。この「ゴダイゴ」というバンド名ですが、”後醍醐天皇”と”GO DIE GO”の意味が込められているそうです。

今回の映画「手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~」でもテーマとなっている輪廻転生は、奈良橋さんにとって重要なキーワードとなっているようです。

人間って生まれて死んでいって……それは全員共通よね

という奈良橋さんの言葉がそれを物語っているようでした。


◆「人生楽しく」がすべて

「人生楽しく、それしかない」と思いながら活動を始め今年で50周年という奈良橋さん。半世紀も経ったと思うと遠い昔のようですが、奈良橋さんにとっては昨日が1967年で、今日が2016年というふうに感じるそうです。それくらいあっという間の期間だったということです。

「若い時は永遠に時間があるように思います。でも、いずれ終わってしまうと最初から感じて生きていると人生がつまらなくなります。限りがあるから大事に生きようと思っています。それと同時に、終わりはあるけれど、終わりはないという感じで夢を持って突っ走ってきたのかなと思います」

そんなふうに目をキラキラさせながら語る奈良橋さんは、やはり永遠の少女のように見えました。


◆人の魅力を見い出す力

その輝く瞳が見出してきたものは、作品だけではありませんでした。奈良橋陽子さんが育てて輩出してきた別所哲也、藤田朋子、今井雅之、川平慈英、オダギリ・ジョーらは、誰もが知る存在感のある役者揃い。

その瞳は、日本から海外へ、海外から日本へと、知名度のあまりない人物を見出してキャスティングを行っています。何か人を見出すコツがあるのかと思いきや、奈良橋さんは肩書、技術力を見ているわけではないのだそうです。

大切にしていることは、「真実に向き合えるかどうか?」ということで、見出された人たちは普段から正直で、素敵な方が多いようです。奈良橋さんは、人の本質を見ているのです。お芝居にもいろんな役柄があってこそ面白くなるのと同じで、人はいろんな個性があっていいし、根っからの悪意がない限りはそれぞれの色があってみんな面白いと、笑顔でお話してくれました。

奈良橋さんに関わった人たちは口々に言います。人としての器が大きく、懐も深く、優しさが集まって出来ているような方だと。そこまで愛される理由は、やはり一人一人にあるものを大切にしていたり、偏った考えや思いで何かを決めてしまうようなことが一切なかったからだと言えるでしょう。

そのことは、奈良橋さんが作詞をしたゴダイゴの大ヒット曲「ビューティフル・ネーム」の中にもうかがうことができます。

名前、それは燃える生命 ひとつの地球にひとりずつひとつ Every child has a beautiful name……

人それぞれ、一人ずついろんな個性があっていい……まさに奈良橋さんの普段から持ち続けている思いですね。


出典 http://rocklyric.jp


◆いい役者とは

それは芝居を演じる上でもいえることだと奈良橋さんは言います。やはり、それぞれの人が持ち備えているものがとても大事であって、違いがあるからこそ美しく、同じ人など世の中に一人もいないのだと。

奈良橋さんが演出をするときには、それぞれの人が持っているものをなるべく引き出してあげたいのだと話してくれました。その人の中に存在しないものを無理をして作り出しても、それは嘘になってしまいます。嘘のある芝居は、人の心に届きません。だからこそ、その人の中にあるものを使って役作りをしてもらっているのだそうです。

「一人一人がダイヤのように全部光っているのです。今回は、○○役だから、この面とこの面を使いましょうとか、使う面を変えるだけなんです。役者は別の人になれるとよく聞きますが、本当は自分以外にはなれないんですよね。結局は、元々持っている自分の体だけで演じるのですから。それぞれの人にあるたくさんのダイヤの面を、どこをどうやって光らせるか?そこを探って演じてもらうのです。そのためには、人間のすべての感情を出せることが必要です。自分を知らないことには演じることが難しくなります。人それぞれ何かを抱えていて乗り越えられないで悩んでいることもあるかと思いますが、自分の持っているものを素直に出せるようになるといい役者になりますね」

こう語る奈良橋さん自身が、生き方も考え方も自然な感じがします。いろんな感情や自分の持っているものを引き出せるようになると、「自分はこれでいいんだ」と人としても自信を持てるようになるのではないかと思いました。だからこそ、奈良橋さんと関わってきた役者さんは個性のある生きた演技をできる方ばかりなのかもしれません。


◆周りを包み込む空気

インタビュー中も、私や同席者の話を遮らずに頷きながら聞いてくれる奈良橋さん。こういった姿勢も、みんなから愛される理由の一つでしょう。お話を聞いていても、その内容やお気持ちに嘘がなく、清々しい空気で辺りを包み込んでいきます。これまで携わってきた方、ご家族やすべての方に対してすぐに感謝の気持ちを口に出しているのも内面の美しさがにじみ出てきます。最初に記述しました偉業を成し遂げているのは、奈良橋さん自身が持ち備えているこういったお人柄にあるのだと納得してしまいます。


出典 http://www.doclasse.com

写真提供: ドゥクラッセ 


◆映画「手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~」

そんな奈良橋さんが今回監督として携わった映画「手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~」を、筆者も一足早く試写させていただきました。

映画の中で表現されている色、自然、さまざまな人たちの心模様がコミカルな中にも美しく描かれています。いわゆる一般的とか普通といわれる人や生き方と比べてしまうと、非日常的な世界の人たちであったり、人間に備わっている身体機能として不足がある人たちが多く登場してきます。それらが、すべてスクリーンの中の世界で一体化し、ごくごく普通の自然の中、時間の流れの中で動いていくのです。この映画の世界観は、自然の彩や人の心にある美しさを映しだした奈良橋さんそのものなのでしょう。

その中でもとても印象的だったのが桜のシーン。ほんの数分映し出された桜が、何か意味を持っているような気がしてなりませんでした。その桜のシーンがとても印象的だったと奈良橋さんに伝えると……大変驚きました。どうしてもこの映画を撮りたいという故・今井雅之さんと共に一番最初に撮影したシーンだったそうなのです。

この映画を観ていると、何かに見守られているような、いつの間にか自分も見守っているような感覚になります。この桜のシーンのお話もそうですが、奈良橋さんをはじめとするキャストやスタッフの皆さんが、今井さんの思いを引き継ごう、喜んでもらいたいという純粋で温かい思いがあるからこそ生み出された作品の空気感なのかもしれません。

そしてこの映画には、今井さんが伝えたかったことがすべて詰め込まれているような気がします。生と死、人それぞれであること、自然、日常、色、人間の複雑な思いや関係……当たり前のようで日々に流されると忘れてしまうような大切なこと。登場人物一人一人がとても素直なキャラクターで、それを個性ある役者たちが見事に演じています。

今井さんが伝えたかったことは、奈良橋さんがずっとテーマにしてきたことと共通する部分があったのでしょう。今井さんの遺志を継いで奈良橋さんが監督として見事完成させた映画「手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで」は、とにかく温かさに包まれています。

この映画の中でよく目にした赤い色。この色にも意味があると教えてくれました。今井さんの遺作であること、映画のテーマなどを思うと、その意味も見えてくるかと思います。奈良橋さんは、今井さんの存在をさりげなく作品の中で息づかせたのです。

自分の話よりも他の方のお話をしてくれる奈良橋さん。キャストや制作関係者のみで行われた試写会では、主役である川平慈英が涙ぐんでいたと話してくれました。その姿を見て奈良橋さんは本当によかったと思ったそうです。「演じるうえでいろいろと苦労もあったでしょう……」と温かく優しい瞳でつぶやいていました。


出典(C)2016「手をつないでかえろうよ」製作委員会


◆誰もがファンになる奈良橋さん

そんな他人思いの奈良橋さんのことを、亡くなった今井雅之さんも大好きだったようです。いつも現場では「陽子さんはすごいんだ。すごい人なんだ」と嬉しそうに話す今井さんの様子に、他の共演者やスタッフも「私も陽子さん大好き」「もちろんおれもだよ」とみんなが奈良橋さんの話で盛り上がるのだそうです。

「そこにいるだけで心強い存在で、言葉はなくても目配り、さりげなくトントンと叩く手の優しさに誰もが励まされてきたんですよ」と同席していた関係者も話してくれました。現場の様子や関係者のお話からも、誰にも壁を作らずに全てを包み込む奈良橋さんの存在がどれだけ大きなものかを感じさせてくれました。

今回インタビューをさせていただいた1時間。たったそれだけの時間でも、奈良橋さんの素直さや可愛らしさに筆者も心を奪われてしまいました。またいつかお会いしたい、そう思わせてくれる素敵な方だからこそ、その周りにはいつも素敵な方々が集まってくるのだろうと心から納得しました。


◆人生も同じ

奈良橋さんといると、世界とか、お芝居とか、そういう大きな舞台ではなくても、人それぞれが生きていく中でも、同じことがいえるような気がしてきます。お仕事でも、家族や友達同士の中でも、自分の輝いている部分を出していけばいい、そうすればどんな自分も好きになれるのではと思えます。

奈良橋さんは、決して奈良橋さん以外の何者でもありません。奈良橋さんではないものを作って生きていません。そのままの姿が、少女のようであったり、包み込むような女神であったり、頼もしい大地や海のようであったり……

ご本人は与えているとは思っていないでしょうが、一緒に時間を過ごすだけでたくさんの大切なものをプレゼントしてくれます。

周りの人を自然と幸せにしてしまう奈良橋さん。

その曇りのない素直な生き方が、さまざまな世界を創り出し、偉業とも言える事を成し遂げてきたのでしょう。


出典 http://www.doclasse.com

写真提供: ドゥクラッセ 


◆奈良橋陽子さん プロフィール

演出家・映画監督・作詞家・キャスティングディレクター

アップスアカデミー芸術監督

ロックグループ「ゴダイゴ」の一連のヒット曲の作詞を手がける。

ニューヨークのネイバーフッド・プレイハウスで演技を学び、1980年ミュージカル「HAIR」の演出で本格的な演出業を開始する。

86年よりアップスアカデミーの前身「UPSアクティング・セミナー」を開設。演出した舞台「THE WINDS OF GOD」は国内のみならず、ロサンゼルスやニューヨークでも上演。

現在はキャスティングディレクターとしても活躍しており、スティーブン・スピルバーグ監督作「太陽の帝国」を皮切りに主な作品では「ラストサムライ」、「SAYURI」、「バベル」、そして「ウルヴァリン:SAMURAI」、「パシフィック・リム」、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」での日本人キャスティング、アンジェリーナ・ジョリー監督「不屈の男 アンブロークン」では、日本人のキャスティングとアクティングコーチを務めた。また、NHK朝ドラ「マッサン」のアメリカキャスティングに協力。全米からシャーロット・ケイト・フォックスを発掘しNHKに推薦した。

公式ブログ

 http://gree.jp/narahashi_yoko

アップスアカデミー

 http://www.upsnews.co.jp/

手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~

 http://www.teotsunaidekaerouyo.com/

パーソナルストーリーメディア 『この空DAY』

自分らしく 自分にしかできないこと 自分が好きなこと、得意なことで 自分の足で歩んでいける笑顔溢れる世界に☆ 一人一人の中にある物語を大切にしています☆